生きてることは楽しいこと。
私には91歳の祖母がいて、名をミホコという。
東京で一人暮らしをしていたが、数年前に認知症との診断を受け、
本人の「山を見て過ごしたい」との希望もあり
八ヶ岳山麓にある小さな老人ホームで暮している。
私が東京から八ヶ岳に引っ越した要因の一つであり、
私と夫を出会わせてくれたキューピッドでもあるおばあちゃん。
認知症の症状は年々進んでいて、今は多分1分前のことも覚えていない。
この半年くらいで私が孫であることも忘れてしまったし、
二人の息子のこともたまに忘れているし、亡き夫に至っては全く覚えていない。
ミホコはそのこと(過去現在のいろいろなことを忘れてしまうこと)を
自覚しているが、あまり気にしていないようである。
「すっかり忘れちゃうんだわ。面白いわねえ。」と他人事のように不思議がっている。
誰かよく分からない私を部屋に受け入れ、楽しそうにおしゃべりしてくれる。
一緒に外出すると、空が綺麗だとか、車がピカピカだとか、
一度雲の上を歩いてみたいんだとか、花が可愛いとか、
毎回同じものに感動して楽しんでいる。すごい素敵さだと思う。
あとゴミが落ちていると必ず拾う。タバコの吸殻でもガムがくっついたのも。
汚いからやめてほしい気持ちもあるけど、そんなところもすごいと思ってる。
「私は今、生きてるのが楽しいのよ。だって今それしかやることがないんだもの。」
生きてることは楽しいこと。
仕事もなく、趣味もなく、家族も友達もなく(忘れてしまい)、
老人ホームで淡々とした日々を送るミホコの言葉に、感動しつつも嫉妬してしまう。
何をするとか、誰と過ごすとか、どこに行くとか、
そんなことにばかり心を割いてしまうけれど、
「生きてる」それ自体の楽しみを見出せる人は本当に幸せだ。
生きてるのが辛い人に、ミホコの生き様を届けたいのだけど
文章力が足りなくて悔しい。
書きながら思い出した、TEDのプレゼン。(おいちゃんはTEDが好き)
全ての瞬間はギフトである。
ミホコは感謝しているから幸せなんだ。